谷本勉強会
臨床医学に関する生涯学習の一環として、有志とともに英語論文に取り組む勉強会を2012年より毎週行なっています。2021年からは半年間・全22回にわたるオンライン勉強会コースとしています。ニューイングランド医学誌(NEJM)やランセット(the Lancet)などに掲載された論文について議論するレターを出したり、症例報告や臨床研究を論文にまとめたりして、海外の臨床医学専門誌での掲載を目指します。専門や所属、年代は問いませんので、ご希望の方はぜひご参加ください。受講料は本研究所への任意の寄付とさせていただいています。
参加の目安は、医学英語論文が全く初めての初級者から、発表経験が多少ある中級者程度の方となります。臨床医学論文の基本的な読み方、書き方を学び、さまざまな講師の講義も受けながら、英語での執筆、発表などに挑戦する機会を提供できればと思います。
講師 谷本哲也
1972年石川県生まれ、鳥取県育ち。鳥取県立米子東高等学校卒。
1997年 九州大学医学部卒業
1997-2007年 九州大学病院、国立がんセンター中央病院、鳥取大学病院等に勤務
2007-2012年 独立行政法人医薬品医療機器総合機構勤務
2012年- ときわ会常磐病院勤務
2012年 ナビタスクリニック川崎 内科
2013年3月 医療法人社団鉄医会 理事
2023年6月 社会福祉法人尚徳福祉会 理事
2023年6月 医療法人社団鉄医会 理事長
2023年9月 ナビタスクリニック川崎 院長
著書に「知ってはいけない薬のカラクリ」(小学館、2019年4月刊)、「エキスパートが疑問に答えるワクチン診療入門」(金芳堂、2020年7月刊)、「生涯論文!忙しい臨床医でもできる英語論文アクセプトまでの道のり(金芳堂、2019年4月刊)」がある。
発表論文
ナビタスクリニック関連論文
https://www.megri.or.jp/navitasclinic
紹介記事
http://coffeedoctors.jp/doctors/3405/
https://gentosha-go.com/articles/-/30948
連絡先
医療ガバナンス研究所
〒108-0074
東京都港区高輪2-12-13-201
Fax: 03-3441-7505
電子メール:tanimotolectures@gmail.com
(講師:谷本哲也)
臨床医学の英語論文に取り組もう!
オンライン谷本勉強会 第8期生募集
【参加者の声】
●イギリス留学中にも勉強会参加(北海道大学医学部生 金田侑大:写真右)
私は昨年一年間、イギリスに留学していましたが、欠かさず出席していた勉強会がありました。それがこの、"谷本勉強会"です。勉強会は週一回、一時間、オンラインで開講されます。論文の書き方はもちろん、問題意識の持ち方や、その周辺の背景情報の調べ方まで含めて、"やり方"を教えていただきながら、実践していける場です。また、最初に進捗報告の時間が必ず取られるため、サボるのは結構勇気が必要です。私にはこの緊張感が丁度よく、加えて、進捗に対して、一緒にゼミに参加している方々からフィードバックがいただけるため、ゼミ以外の一人で論文に取り組む時間も大変充実したものになりました。
いくつか論文を発表した中でも、ウクライナ避難民と共に入国してくるペット犬の狂犬病リスクに関して書いた論文は凄く思い出に残っています。これは、イギリス留学中、友達と電車旅をしている時にニュースを見て、その場で友達に、「ちょっと一緒に論文書かない?」と言って、電車の中で初稿を書き上げたものになります。初めて自分自身でテーマをイチから設定して書き上げ、友達にファクトチェックを依頼し、谷本先生ら共著者と原稿をブラッシュアップして最終的に仕上げた論文です。論文作成はチームプレイだということを実感した瞬間でした。完成した原稿は、QJMというイギリスのジャーナル(IF14程度)に提出し、1日も待たずAcceptの連絡をいただきました。
このようなことができたのは、日頃から目の付け方やエビデンスの集め方、そして、アウトプットする能力を、勉強会で養っていたからに他なりません。論文にしたいテーマがなんとなく頭にありながらも動けていない方や、医療者として一生の発信力を鍛えていきたい方はぜひ、参加してみることをおすすめいたします。
Kaneda Y, Sakeshima K, Takahashi K, Ozaki A, Tanimoto T. Public health risks for relaxing quarantine for pet dogs entering with Ukrainian refugees. QJM. 2022 Jul 9;115(7):495-496. doi: 10.1093/qjmed/hcac135. PubMed PMID: 35640984.
●論文は臨床医の足跡 (富山大学検査・輸血細胞治療部 村上純)
私は富山で血液疾患と輸血を担当している臨床医です。かつて築地の国立がんセンターで研修中に、谷本先生や上先生らと知り合い、次々と世界に論文を発信している事は注目しており参加しました。
勉強会では執筆中の症例報告に関連し、NEJMの論文が目に留まり、それについて議論するレターを投稿し採択されました。免疫性血小板減少症(ITP)に対する新薬の効果を示した第1/2相試験でしたが、ヘリコバクター・ピロリ菌については全く考慮されておらず、自己免疫疾患合併のEvans症候群で死亡例があった事については考察がなかった点を指摘しました。日本の臨床医であれば気が付くような事だったので、採択されて驚きました。しかし、この時に感じたのは、誰も答えようのない趣味的な質問は避けるべきで、できるだけ多様な視点から建設的な議論が成立するよう書くことがマナーなのだということです。
今回の経験から、論文を読む際に、自分の経験を思い合わせ、気が付いた事があればこまめに投稿する習慣をつけると良いと考えています。私のようなのんびり屋であっても、毎週勉強会にアクセスするたびに論文作成のペースを保つきっかけになっています。これからも多くの出会いを大切にして、生涯学習を続けていければと思っています。
Comment in Rilzabrutinib in Immune Thrombocytopenia.
Murakami J, Senoo Y, Tanimoto T. N Engl J Med. 2022 Jun 30;386(26):2537-2538. doi: 10.1056/NEJMc2206285. PMID: 35767451.
●粘り勝ちでイギリスの著名専門誌に掲載
(スロバキア大学医学部卒EU医師 妹尾優希:写真右)
私はスロバキアの大学医学部を卒業しEUの医師免許を取得しました。大学2年生の時に医療ガバナンス研究所でのインターンをきっかけに、大学在学中からオンラインで谷本勉強会に参加しています。
論文を読んだことがないばかりか、「PubMedってなんですか??」という段階からご指導いただき、手取り足取りではありますが、第一著者として既に6本の論文を医学専門誌で発表することができました。その中でも特に思い入れ深いのは、2022年5月に有名なブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(the BMJ)に掲載した製薬マネーに関する論文です。
製薬マネーは医師と製薬会社の利益相反に関する問題で、本研究所から数多くの論文などが発表されています。その一環として、製薬会社から医師へ支払われた金額を調べることのできる『製薬マネーデータベース(Yen for Docs)』の2016年度版の作成経緯や、製薬マネー調査をするにあたり医療者と経済的に独立した探査報道専門記者がコラボレーションをする利点について解説しました。
論文の投稿用原稿が完成したのは2019年5月でした。早速投稿を開始しましたが、ランセット(the Lancet)と米国医師会誌(JAMA)からは、会えなく門前払いを受けてしまいました。そこで原稿をそのままthe BMJに投稿したところ、12月に編集部から「本誌ではなく、BMJ Opinion(ブログ版)になら掲載できる」と連絡がありました。藁にもすがる思いで掲載のスタイルに合わせて論文の書き直しを進めたのですが、2020年は運悪く新型コロナウイルスのパンデミックと重なってしまいました。コロナ関連の論文投稿が有力誌に殺到してしまい、編集部より返信が途絶えてしまいました。
何度も諦めそうになるなか、谷本先生と研究所の尾崎章彦先生より後押しいただき、編集部に粘り強く繰り返し連絡を行、原稿の度重なる修正を2年にも渡って続けました。その結果、パンデミックへの対応もある程度落ち着いてきたのか、突如、編集部より「ブログ版ではなく本誌に正式掲載します」と連絡が入り、棚ぼた的にthe BMJへの掲載が決まったのです。
今回の論文を通して、「リジェクトされても掲載されるまで、簡単に諦めず、どこまでも粘り続ける」ことの重要さを痛感し、その貴重な成功体験を得ることが出来ました。2年間の作業では紆余曲折が重なりましたが、本当に優しく寛大にご指導いただきましたました。谷本勉強会では、論文執筆の基礎、方法論、着眼点など技術的な点を学ぶことはもちろんですが、論文に取り組む姿勢を経験できたことが非常に大きな収穫になったと言えます。
Senoo Y, Ozaki A, Watanabe M, Tanimoto T. A collaboration between physicians and journalists to create unbiased health information. BMJ. 2022 May 13;377:o1209. doi: 10.1136/bmj.o1209. PMID: 35562121.